【コラム】マニュアル作成における「脳内共同ガールフレンド」

連載 第18回 2014年4月4日(金)

昨年10月途中から今年1月にかけて、比較的大型のマニュアル作成案件に取り組みました。

大手商社のSAP新規導入のために操作マニュアルを作成するというものですが、規模が大きく、3.5カ月で3,500ページくらいを作成しなければならない。しかもシステムは開発途中なので、納期が近づくほど人員を増やして対応する必要があります。実際にスタート当初は6名だったチームが最終的には14名となり、これほどの規模のチームで短期集中的にマニュアル作成に取り組むことは当社にとっては初めてのことで、品質管理はもちろん工数管理等、管理業務だけでもたいへんでした。

しかし、一方で普段にはない一種の高揚感というかチームワークが生まれました。

この雰囲気はなんだろうと思っていると、「脳内共同ガールフレンド」という寓話を思い出しました。有名な話なのでご存じの方も多いと思います。第2次世界大戦下のドイツ軍捕虜収容所で、あるフランス兵捕虜のグループが全員で自分たちの雑居房のなかに“架空のガールフレンド”がいると想定し、長い捕虜生活を乗り切ったというお話。部屋の片隅にいつも13歳の可愛らしい少女が座っていると設定し、例えばケンカした兵士は少女に詫びなければならない。着替えるときは、少女の席のまわりに布をはって目隠しをする。食事では分け合って彼女のために用意する。さらに、あらかじめ決めた彼女の誕生日やクリスマスには、それぞれが手づくりでプレゼントを用意して贈るなど、日常が彼女を中心に回っていくようになりました。そしてこの捕虜グループは全員が厳しい捕虜生活を生き延び、終戦後、故国に戻ったそうです。

 

わたしたちの場合は、捕虜生活とは厳しさのレベルがまったく異なりますが、絶対的な納期を守るためにリーダーをはじめ14名全員がかなりのストレスにさらされていました。納期とボリュームから逆算して細かなスケジュールを立て、その差異を日次で確認し、その進捗状況によってライターの担当調整や依頼先との確認・交渉を続ける。もちろん品質の維持は必須。さらに、資料の不足やシステム開発の遅延、ライターの体調不良など、不確定な要素が日々新たに起き続ける。一般的にはごく当たり前の工程管理ではありますが、マニュアル作成という多分に人的要素が大きい業務のマネジメントはなかなか難しいものがありました。

ただ、その一方で、チームの雰囲気がぎすぎすしていたかというと、そうではありません。定期的なミーティングはもちろんですが、マニュアル作成に不可欠な用語の統一や書き方の相互確認のための会話をメンバーそれぞれが自発的に行い、時には笑い声があがり、グチを言ってみたり、時間に追われているなかでも一定以上のコミュニケーションが成立していました。

特にチームで「脳内共同ガールフレンド」のような設定をしたわけではありません。ただ、日々の進捗管理を積み重ねるなかで、「大量のマニュアルを短期間に全員で仕上げる」という目標を自然に共有できたのではないかと思います。結果として、納期に間に合い、お客様からも一定の評価をいただくことができました。同規模のチームでも、もし納期が長ければ、ここまでのチームワークは高まらなかったかもしれません。

 

今回の経験で、改めてチームワークの大切さを確認することができました。ただ、たまたまいろいろな要素が重なった幸運なケースともいえます。どのような案件でも、もしくは案件に応じて、しっかりとしたコミュニケーションとチームワークが成立するような「脳内共同ガールフレンド」のような存在を工夫していく必要があると感じています。