【コラム】皮膚感覚とマニュアルの関係?!

連載 第16回 2013年10月10日(木)

マイクロメイツではさまざまなマニュアルを作成していますが、最近「PCや紙では閲覧せず、iPadだけで見られれば良い」という業務マニュアルの依頼が ありました。日常的にiPadを利用している職場環境ならではの依頼で、わたしたちも「いよいよ来たな」という印象を受けました。
制作にあたってはできるだけ簡素な方法ということで、PowerPointで編集し、PDF上でリンクを設定。iPadではPDFビューワで画面をタッチしながらページをめくったり、リンクでジャンプしたりして閲覧してもらいました。
スマートフォンの爆発的普及、Windows8の登場とも相まって、キーボードに代わって画面をタッチして操作する機会は格段に増えました。タッチするのは人間の指で、タップ、フリック、スワイプ、ピンチイン、ピンチアウト、シェイク(わたしはまだ使ったことがありません)などなど、キーボードとは異なる複雑な動きが求められます。人によっては苦手な操作もあるかもしれません。

さて、指といえば、人間の器官のなかでも最も繊細に動き、指先は皮膚感覚が最も研ぎ澄まされている部分です。もちろん、皮膚感覚は指先だけでなく、人間は全身が皮膚で覆われていることから、全身に感覚器をもっているといえます。
皮膚科学研究の傳田光洋(デンダミツヒロ)氏は、皮膚を「第3の脳」と表現しています。第2は腸だそうで、アメリカの心理学者ウイリアム・ジェームスは「人間の思考や感情を生み出すのは『脳』ではなく、腸などの内臓と皮膚・体壁系である。脳はその活動の単なる現われにすぎず、感情(心)より先に体の働きがあると考えられる」と述べています。
確かにマッサージは、直接的に脳に刺激を与えていないのに気持ちよく、体だけでなく心もリラックスさせることができます。
そもそも皮膚の役割は、大きく分けると次のふたつだそうです。

①生命維持のための「防御機能」
②環境変化を感知する「感覚機能」

「防御機能」は身体の3分の2を占める体液の流出を防ぎ、同時に体外からの異物の侵入を防ぐ機能です。異物が侵入した場合、ランゲルハンス細胞(免疫細胞)が感知して異物を集中攻撃する皮膚免疫システムが働きます。
そして「感覚機能」は、例えば皮膚に感じる風の強さや熱さ・冷たさなどで、耳が聞こえない人にも目が見えない人にも、周囲に起こっている現象を感じることができるような機能です。
前述の傳田氏はカエルを使って次のような実験を行いました。頭部を切り取ってしまった脊髄だけのカエルを宙にぶら下げておき、背中の一部に刺激を与える。するとそのカエルは「かゆいなあ」とばかりに後ろ足でその部分をしきりに掻く。つまり刺激を与えられた場所を脳がなくても認識できたのです。
わたしたちはすべての思考や感覚を、脳を通じて処理すると思っていますが、実は皮膚そのものが脳の役割を果たしているのです。

人によってはキーボードのタッチの良しあしで仕事のはかどり具合が違うと、わざわざ高価なキーボードを購入する人もいます。改めて皮膚の感覚機能を思えば当然のことです。iPadなどのタブレット端末では、これからより皮膚感覚を意識したタッチパネルが登場するかもしれません。では、そこで表現されるコンテンツのひとつであるマニュアルは、人間の皮膚感覚と親和性をもった何かが求められるのか。わたしの想像を超えた領域ではありますが、未来においてはそうしたことも求められるのかもしれません。