【コラム】「神経系」を支えるマニュアル

連載 第14回 2013年6月3日(月)

しばらく更新が滞っておりました。Webサイトをリニューアルして、本コラムのタイトルが「マニュアル“脳科学”研究所」となりましたので、脳にまつわる話題からリスタートします。

4月2日、アメリカのオバマ大統領が、人間の脳の仕組みを解明するための国家規模の研究計画を始める方針を発表しました。1961年に始まった月に人を送る「アポロ計画」、人間のゲノム(全遺伝情報)解読を目指して1990年代に始まった「ヒトゲノム計画」に匹敵する大規模プロジェクトになる見通しとのこと。脳内の約1000億個の神経細胞が結び付けられている接合点の活動を記録して地図をつくることを目指し、この研究によりアルツハイマー病や自閉症などのメカニズムを解明して、治療法や医薬品の確立などに役立てたい考えだそうです。脳研究が進むことで医療だけでなく、バイオやIT産業にも波及することが期待されています。
一方で、人間の細胞は脳を含めると何十兆もあり、神経系によって結びついています。細胞は一つひとつが個別に生きており、細胞同士がケンカもせずに一定の秩序をもって調和しているのは、遺伝子によってマネジメントされているといわれていますが、では遺伝子は何によって支配されているのか。それをある学者は「サムシング・グレイトとしかいいようがない」としています。現代科学によっても解明されない領域は数知れません。さらに脳あるいは遺伝子という領域でのメカニズムの解明や化学の進歩は、経済活動への波及を含めた夢のあるフロンティアであっても、生命の尊厳や倫理観など一筋縄ではいかない課題も孕んでいます。

さて、ずいぶんスケールの大きな話を書いてきましたが、本コラムの主題は「マニュアル」です。最近、マニュアルに対して否定的なイメージ(「マニュアル的対応」「マニュアルでは仕事ができない…」)を抱かれることなく、「マニュアルは不可欠」と肯定的な声を聞くことが多くなりました。企業活動にマニュアルが着実に根付き、機能し始めているように感じます。 今や企業活動にコンピューターおよび各種の業務システムは欠かせません。それは人間に例えれば脳を中心とする神経系の役割を果たしているとしましょう。では遺伝子はどうか。それはまさに脈々と受け継がれる創業の理念や、あるいは明文化されていないとしても企業それぞれが独自にもっている企業文化そのものかもしれません。細胞ともいえる一人ひとりの社員はシステムという情報系によってつながれ、さらに企業文化という遺伝子によって生命体としての秩序を保っている。こじつけのようで、イメージは合っているような感じです。ただ、企業の場合、構成する個々の人間は時として自分勝手なことをするので、なかなかコントロールが難しいのが現実です。
わたしたちがお手伝いするマニュアルが、企業組織の神経系であるシステムの定着化を支援するものであることをイメージすると、また新たな発想や価値が生まれかもしれません。