【コラム】マニュアルを“リフォーム”する

連載 第9回 2010年9月28日

当社では日頃からマニュアルについてのご相談を受けますが、最も多いケースのひとつは「システム開発者がつくった操作マニュアルがわかりにくいのでなんとかしたい」というものです。実際にそのマニュアルを拝見すると、何ともわかりにくい。ユーザーにとって、もともと難しいシステム操作がますます難しくなってしまう不幸なケースです。その課題を解決するアプローチとして、当社ではマニュアルの“リフォーム”をご提案することがあります。

システム開発者が作成するマニュアルって

システム開発者がつくった操作マニュアルがなぜわかりにくいのか、わたしたちは次のような背景があるのではないかと考えています。

●システムの機能を漏れなく記述することがマニュアルの最優先事項だと信じている
●システムはすべて知っているが、ユーザーの目線に立ってマニュアルを編集・構成する視点がない
●システム開発に予算・時間のほとんどを使ってしまい、マニュアル作成に使う予算・時間がない
●残業続きの過酷なシステム開発にスタッフが疲弊してしまい、わかりやすいマニュアルをつくる余力がない(肉体的・精神的)
●マニュアルは比較的若手のスタッフがつくることが多く、こなれた内容にならない
●Excelは得意だがWordは不得意で、なかなかマニュアルがうまくまとまらない

多少意地悪な見方もありますが、いかがでしょうか。
また、当社の立場からこうしたマニュアルを拝見すると、以下のような共通の課題が見えてきます。

■日常の業務の流れのなかでユーザーがシステムを利用するシーンに沿って構成が組み立てられていない
■ユーザーがやりたい業務を的確に探せるように、見出し文やデザインが工夫されていない
■読みやすい、わかりやすいデザイン表現が不十分
■表現・表記、用語・用字が不統一で、ユーザーが混乱しやすい
■注意や参照など別記すべき内容が本文内に含まれたまま記述されていて、メリハリがない
■文章そのものがかたく、読みにくい
■図解やフローチャート、表組み、箇条書きが少なく、直感的なわかりやすさに乏しい

システム開発者はあくまでもシステムのプロフェッショナルであって、マニュアルにまで完璧を求めるのは酷な話だともいえるでしょう。
このような課題を解決するため、当社に対してマニュアル作成の依頼があるわけですが、すぐにマニュアルをつくり直す作業に着手するわけではありません。その前に、背景や課題に応じて、いくつかの改善パターンをご提案させていただきます。よくあるのは次のような3方向のご提案です。

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住宅建築でいえば、提案Aは新築、提案Bはリフォーム、提案Cは増築といった感じでしょうか。

トータルバランスに優れた“リフォーム”

特におすすめしたいのは提案Bのデザイン・リニューアル(リフォーム)です。
現行マニュアルの基本構成を活かし、一部の文章をリライトしつつデザイン表現を見直すことで、多くのマニュアルのユーザビリティは大幅に向上します。当社のように第三者が客観的に課題をクリアしながら編集すれば、それほど時間はかかりません。Wordファイルや画面ショット等のデータを現行マニュアルからそのまま引き継ぐことができれば、時間的にかなり短縮することができます。
さらに費用的にも圧縮することができますので、費用対効果の高いケースがほとんどではないでしょうか。
もちろん、マニュアルとしての機能性や完成度は新規作成には及びませんし、安易にリフォームをしたものの意外とややこしいシステムのため底なし沼のように作業時間が増えてしまうリスクもあります。ただ、それを差し引いたとしても、時間や費用を含めた総合的なバランスの良さはもっと注目されるべきです。
リフォームといえば、「リフォームの匠」が登場する有名なテレビ番組があります。その番組では匠が経験とアイデアを駆使して難しい条件や課題を解決する様子が、まさに劇的に紹介されています。マニュアルの場合は、テレビ番組ほどドラマチックではありません。ただし、以前と比較してはるかに読みやすく、わかりやすくなったマニュアルを評価していただいています。

システムが完成して稼動が始まれば、ユーザーが目にするのは操作マニュアルだけになります。どれほど苦労してシステムを完成させたとしても、結果として満足できない(使えない)マニュアルの印象だけがいつまでも残る、というお話をお聞きすることがあります。
たかがマニュアル、されどマニュアル。マニュアルにも“リフォーム”というアプローチがあることを、もっと知ってもらう努力が必要なのだと感じています。