【コラム】「業務マニュアル」を知っていますか

連載 第5回 2010年4月1日

早いものでもう4月、いよいよ新年度を迎えました。先月は年度末ということで、わたしたちにとって年間を通じて比較的忙しい時期。システムのカットオーバーが多く、また予算の年度内消化ということで納品が集中する傾向にあります。一般的にみても、年度替りで新人の加入、異動7組織変更と、いろいろ変化の多い季節でもあります。
今回は、この変化のタイミングで「業務マニュアル」について考えてみたいと思います。

業務マニュアルが必要となるとき

わたしたちがつくるマニュアルのひとつのカテゴリーに「業務マニュアル」があります。ときどき「業務マニュアルをつくりたい」とご相談をいただくわけですが、最近の傾向として興味深い現象があります。それは当初、システムの操作マニュアルについてお客様と打ち合わせをしていると、自然と「業務マニュアル」的な方向に話が進んでいくことです。
社内で使うシステムであれば当然、背景には業務フローがあり、その連動を加味してマニュアルをつくることは当然といえば当然なのですが、以前は、操作マニュアルはあくまでも「操作」について記述するマニュアルとして存在していました。
なぜこのような傾向になってきたのでしょう。そこで、業務マニュアルが必要となる状況を次のように想定してみました。皆さんもご自身の組織について、どの項目にチェックが付くか考えてみてください。

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どれもが当たり前といえば当たり前のことですが、システムの導入とは関係なく、組織で働くほとんどの皆さんが日常の業務でこうした課題を抱えているはずです。
「新しい組織になって、何がなんだかよくわからない」「その仕事はあの人に聞かないとわからない」「ミス、トラブルが多すぎる」「忙しいときだけ誰か手伝ってほしい」「仕事のやり方がはっきりしない」「引継ぎのための資料がない」「システムの操作マニュアルだけじゃ、わからない」。いろいろな問題点や感情が職場に渦巻いているのではないでしょうか。
そういう意味では、業務マニュアルはいつでも、すべての職場で必要とされているに違いありません。

認知されていない業務マニュアル

ではもう一歩、なぜ業務マニュアルが必要とされるのかを考えてみましょう。

■雇用の流動性
日本的経営の象徴だった終身雇用制度や家族的経営が崩れ、さらに厳しい経済環境のなかで雇用の流動性が高まっている

■法令遵守
従業員に対してコンプライアンス意識を徹底しなければならない

■IT活用の進展
IT活用による業務の効率化、システム化のために、業務プロセスの可視化が求められている

■若者の意識の変化
イマドキの若者たちは自分の仕事について、業務内容・やり方・権限・責任などきちんと書いたものがあることが前提となっている。自らすすんで学ぶ、アウンの呼吸など理解できない

■団塊世代の定年退職
技術・ノウハウの空洞化を防ぐため、若い世代にそれを伝承しなければならない

このような視点からすれば、すべての組織、職場、企業において、業務マニュアルは不可欠な経営ツールであるはずです。あるいは経営資源とも定義できるのではないでしょうか。ところが、わたしたちの経験からすれば、業務マニュアルよりも操作マニュアルを作成する方が圧倒的に多い状況にあります。もしかしたら「操作マニュアル」は知っていても、「業務マニュアル」という概念そのものをまだ多くの人が知らないのかもしれません。だから、操作マニュアルの打ち合わせが知らず知らず業務マニュアルの打ち合わせになっていくことは、ある意味では自然なことなのでしょう。

業務マニュアルの認知度が低いのは、わたしたちのコミュニケーション不足、アピール不足もあるはずです。よいマニュアルをつくることはもちろんですが、業務マニュアルの価値をもっと声を大きくしてアピールしていくことも必要なのかもしれません。