【コラム】コンペについて考える

連載 第13回 2011年8月5日(金)

何年仕事をしていても緊張するのが、初めてお客様とお会いする時。Webサイトから問合せをいただいて、これまでまったくお付き合いのなかった企業を訪問させていただくことがあります。この場合はほとんどがコンペ、いわゆる同業他社との競合案件となります。そこで今回は、コンペについて考えてみたいと思います。

勝ったり負けたり

わたしたちに限らず、多くの企業にとってWebサイトは新しいお客様と出会う方法として重要です。
一方のお客様、つまり「マニュアルを作らなければならない」というミッションを抱えたご担当者様からすれば、Webの検索は“頼りになるマニュアル制作会社”を見つけるための欠かせない(唯一の?)アプローチに違いありません。無数の検索結果からWebサイトの内容を検討して数社を選抜し、見積金額や実績・提案内容を比較検討。そして最終的に1社に決定して発注する。とてもスマートで合理的です。
しかし、その過程には悲喜こもごものドラマがあるわけです。提案するわたしたちもたいへんですし、選択するお客様もきっといろいろご苦労があるに違いありません。
試しに当社の最近のコンペ案件での勝敗の理由を整理してみましょう。
まずは負け試合(失案案件)から。

失注案件
依頼会社様 マニュアルの種類 理由
A財団法人様(保険) 業務マニュアル 見積費用が高い(最も安い会社へ発注)
B社団法人様(金融) 業務マニュアル 見積費用が高い(2社の最終選考に残ったものの、安い会社へ発注)
C社様(サービス) 社内システム操作マニュアル 見積費用は他社と変わらなかったものの、本案件に合致した実例とその実例を作成した担当者をアサインするという提案をした他社へ発注
D社様(商社) SAP操作マニュアル(英語版) 見積費用が高い(当社より安く、しかも超短期納品に対応できる会社へ発注)

 

では、勝ち試合(受注案件)はというと。

受注案件
依頼会社様 マニュアルの種類 理由
E社様(食品) 業務マニュアル 提案内容を評価(提案書だけでなく、仕上がりサンプルも提示)
F社様(メーカー) e-ラーニング 提案書の内容と見積費用が要件に合致
G社様(サービス) 業務マニュアル 提案内容と実績を評価(見積費用は他社に比較して最高値だったものの、品質優先でご決定)
H社様(システム開発) 操作マニュアル 提案内容を評価(「斬新なデザインのマニュアルをつくりたい」との要件に対してご提案したデザイン・サンプルが最も高い評価を獲得)

 

勝負のポイントは

このように整理してみると、失注した案件は当社の見積費用が高く、受注した案件は当社の提案内容を評価していただく、という傾向が見えてきます。
もう少し詳しく考えてみましょう。お客様が選択するポイントは次のように整理できると思います。

見積費用

用意できる予算の範囲で収まるのか、あるいはもっと安くできるのか。ほとんどの企業では複数社の見積を検討した上でないと社内稟議が通りませんから、最も重要なポイントです。見積算出の根拠が明快であるかどうかも、評価の対象となるでしょう。ただし、安ければよいというわけではないことも、当社は経験しています。

実績

過去のマニュアル作成実績が豊富か、あるいは作成したいマニュアルと同一内容の経験があるかもポイントです。経験が豊富であれば、それだけ質の高いマニュアルが期待できます。さらに、発注するお客様側からすれば、いろいろ教えてもらいながらマニュアルが作れる、もっと端的にいえば「楽ができる」ということになりますから。

デザイン等

見積だけでなく、マニュアルのサンプルの提出を求められる場合があります(当社では自主的にサンプルを提出する場合もあります)。サンプルのデザイン性(好き嫌い)や機能性はもちろん、たとえ仮ではあっても目次構成の組み立ての妥当性(ある意味でのセンス)などは、とてもシビアに評価されていると感じています。

スケジュール・体制

提案にはスケジュール(納期)が不可欠ですから、それが要望に沿っているかなどは、基本的な確認項目です。また、どのような体制で進めるのか、つまり何人で作業を進めるのか、場合によって常駐が可能かどうか、繁忙期に応じた体制が組めるのか等、説得力のある組み立てが必要です。

相性

たいへん情緒的ではありますが、当社と一緒に仕事をしたい、と感じていただけるかはとても大事だと思います。お互い人間ですから。

以上のように勝敗のポイントは複雑かつ多岐にわたります。ということは、何が個々のお客様にとっての最終選択のキーポイントなのかは、フタを開けてみなければわからない、ということが改めてわかったような気がします。

すべてを込めて、ストーリーを共有する

もちろん、提案をする前にできるだけ条件をきめ細かく確認するようにはしています。それでも、初対面の方からどこまで情報を引き出せるかは未知数ですし、企業文化を体感するにはあまりに時間と情報が足りません(他社さんの動向も気になりますし)。
われわれができるのは、限られた前提条件と情報をもとに、経験に基づく想像力と創造力を最大限に発揮して、お客様が望んでいるマニュアルを実現するための道筋をできるだけ具体的に組み立て、提示するしか方法はありません。
つまり、考えうるすべてを込めた提案でないと、お客様の心に響かない。そして、マニュアルの完成までのストーリーを、「これだ!!」とお客様が合理的かつ情緒的に共有していただければ、もう落ちたも同然?

未知のお客様へのコンペ案件はほんとうにたいへんです。日常のマニュアル作成業務をストップして、提案書づくりに没頭することもあります。その結果で一喜一憂することを考えれば、金曜日に考えるのはちょっと重いテーマでした。ただ、やれるだけのご提案をしていけば、結果はどうにでも。くらいの気持ちでないと、心身とも持ちません。
ということで、週末はせいぜい頭を空っぽにしたいと思います。

 

※機密保持契約等の観点から、具体的な企業名、製品名、サンプル等は公開しておりません。お打合せの機会をいただければ、案件に応じたサンプルを持参いたします。